DINNER



NARISAWA / 南青山
NARISAWA

食事の前に供される「引盃」。
古来より受け継がれてきた日本の美しい儀式から、今夜のコースが静かに始まる。 この一杯だけで、これから始まる食事への期待が一気に高まった。
NARISAWAの料理は、単に美味しいだけではない。
日本の四季、森の生命、そして普段は目にすることのない自然の営みまでを、料理として表現している。
象徴的だったのが、パン。
焼き上がる前、二次発酵中の生地がテーブルへ運ばれてくる。 目の前にあるのは、酵母が今まさに働いている生地。
普段は意識することのない「菌」という存在を目で見て、香りで感じ、焼き上がるまでの時間を共有する。
料理を口にする前から、自然との対話が始まっていた。

「Innovative Satoyama Cuisine」。
その言葉は、決してコンセプトだけではない。 食材だけでなく、その背景にある自然環境や微生物、生産者、そして日本という土地そのものまで、一皿の中に落とし込まれている。

そして今回、特に印象に残ったのがペアリング。
登場する日本酒の多くは、富山の銘酒「満寿泉」。 しかも、その多くがNARISAWAの料理のために造られた特別な一本だった。
満寿泉と成澤シェフの長年の関係から生まれたペアリングで、中には精米歩合17%という一本まで。
料理に合わせるために酒を選ぶのではなく、料理のために酒そのものを造る。
そこに、ワインペアリングとはまた違う、日本ならではの美しさを感じた。

料理、空間、香り、音、そして時間。
五感すべてを使って自然を体験する。
食事をしたというより、 一つの作品を鑑賞したような数時間だった。
広く浅くではなく、狭く深く。
AKUMATOの選定思想