mærge / 南青山
mærge
料理を超えて、「思想」が記憶に残る店だった。

三つ星グランメゾンを目指しているだけあって、料理、空間、接客、そのすべての精度が高い。
しかし、今回最も記憶に残ったのは、料理そのものだけではなく、その奥にある「思想」だった。
今回は「シェフズテーブル」の個室を利用。
個室でありながら、目の前にはオープンキッチンが広がる。料理が出来上がっていく過程まで含めて、一つの体験になっている。
特に印象的だったのは、厨房全体に漂う“妥協しない空気”。
一皿を出すまでに何度も確認し、細かな微調整を重ねていく。

完成した料理だけを見ていると分からない。その一皿に至るまでの積み重ねを目の前で見ることで、mærgeの料理の精度がどこから生まれているのかが伝わってきた。
そして、さらに惹かれたのが、シェフ・柴田氏の考え方だった。
命の循環と、おいしさ
産卵のペースが落ちた鶏は「廃鶏」と呼ばれ、食材としての価値を低く見られてしまうことがある。
今回いただいたmærgeの資料には、「荒間鶏」という食材についての記載があった。

ごきげんファームの荒間氏との出会いをきっかけに、単に「廃鶏」として扱うのではなく、生産者の名前を冠した「荒間鶏」として料理に生かしているという。
自家配合の飼料で育てられた荒間鶏は、濃厚な旨みを生かして出汁に使ったり、mærgeの技術によって柔らかく仕上げたりする。
そこにあるのは、食材をただ消費するのではなく、一つの命として最後まで向き合う姿勢だった。
「いただきます」という言葉の意味を、改めて考えさせられる。
料理だけではなく、文化まで残す
もう一つ印象に残ったのが、日本刀の話だった。
これは訪問時にサービスおよびシェフから直接聞いた内容。
日本刀には製造上の制限があり、刀鍛冶が技術を継承していくことは簡単ではないという。
作る機会そのものが失われれば、職人が火を落とし、長く受け継がれてきた技術や文化まで失われてしまう可能性がある。
そこでmærgeでは、刀鍛冶に、製造制限のない肉切りナイフを日本刀と同じ技法を生かして製作してもらう取り組みを行っていると聞いた。

料理を作るための道具を通して、日本の技術を次へ残していく。
食材だけではなく、その周囲にある文化や職人まで見ている。
その視点が、とてもmærgeらしいと感じた。
一皿の向こう側にあるもの
料理が美味しい。
空間が美しい。
サービスの精度が高い。
それだけでも、十分に良いレストランだと思う。
でも、mærgeで記憶に残ったのは、そのさらに奥にあるものだった。
何を料理するのか。
誰が作ったものなのか。
何を次の世代へ残していくのか。
一皿の向こう側まで考えている。
ただ美味しいだけでなく、“残すべきもの”まで考えている店だった。
広く浅くではなく、狭く深く。
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